日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
Epigallocatechin gallateの膜傷害作用に関する研究
polymyxin Bとの比較
生貝 初原 征彦大鶴 洋島村 忠勝
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 46 巻 5 号 p. 179-183

詳細
抄録

チャCamellia sinensisの葉抽出液に含まれる (-) epigallocatechin gallate (EGCg) の膜傷害作用機構について研究した。EGCgのStaphylococcus aureusに対する吸着量はEscherichia coliSalmonella Typhimuriumに比べて約1.5~3倍多く, グラム陽性菌とグラム陰性菌に対するEGCgの抗菌作用の差が菌体へのEGCgの吸着量に依存していることが示唆された。また, S.Typhimuriumのwild株 (SL696) はlipopolysaccharide (LPS) 変異株 (SL1069, TA2168) よりEGCgの吸着量が少なく, LPSがEGCgの吸着を阻害していることが考えられた。しかしながら, 本研究で用いたサルモネラ菌株の問ではEGCgのminimum inhibitory concentration (MIC) に差が認められなかった。次に, 膜傷害性抗菌物質polymyxin B (PL-B) とEGCgの膜傷害活性について比較した。Phosphatidylcholine (PC) リボソーム膜中に含まれるphosphatidylserine (PS) 濃度の増大に伴ってリボソームに内包された蛍光物質5, 6-carboxyfluorescein (CF) のEGCgによる放出は抑制され, PCとPSのモル比が19: 1になるとCFの放出はほとんど起こらなくなった。一方, PCリボソーム膜中のPS含量の増大に伴いPL-BによるリボソームからのCF放出が増加した。これらの結果から, EGCgはマイナスのnet chargeを持ち, プラスの電荷を持つ細菌の膜成分に結合後, 膜傷害を引き起こす可能性が示唆された。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
次の記事
feedback
Top