日本化学療法学会雑誌
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注射用fosfomycin sodiumの市販後調査
全国規模10万例についてのprospectiveな安全性調査
川端 利明横田 正幸真山 武志清水 喜八郎
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2000 年 48 巻 11 号 p. 851-874

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抄録

静注用ボスミシン®Sの使用実態下での, 主として安全性, 特にアナフィラキシー・ショックの発現状況 を正確に把握するために, 1994年7月~1999年3月までの5年聞に, 全国規模で10万例のプロスペクティブな市販後調査を実施し, 次の調査結果を得た。
1.全国4, 737施設から103, 471例が収集され, 安全性解析対象例100, 230例, 有効性解析対象例は41, 477例であった。
2.副作用発現症例率は全体で0.56%で, アナフィラキシー・ショックが4例 (0.004%), アナフィラキシー様症状が1例 (0.001%) 認められた。
3.副作用の発現頻度では, 肝臓・胆管系障害が212例 (0.21%) ともっとも多く, 次いで消化管障害146例 (0.15%), 皮膚・皮膚付属器障害137例 (0.14%) の順であった。
4.アレルギー歴を有する症例に本薬剤が投与された場合の副作用発現頻度は, アレルギー歴なしの症例のそれよりも高かったが, 頻度がもっとも高い皮膚・皮膚付属器障害でも0.65%であった。
5.Arbekacinなどのアミノグリコシド系薬やvancomycinとの併用例における腎に関連する副作用発現頻度は低かった。また, 本薬剤を腎毒性軽減のために制癌剤と併用した370例では, 腎に関連する副作用は全例に認められなかった。これらの成績は本薬剤の臨床例における腎毒性軽減作用の可能性を示唆するものであるが, 今後の検討が望まれる。
6.本薬剤の溶解液, 特に生理食塩液で溶解された場合の副作用に与える影響を検討したが, ナトリウムが副作用に与える影響は明白には示されなかった。
7.最終全般改善率は81.2%で, 再審査時の76.7%とほぼ同様な成績であった。

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