日本化学療法学会雑誌
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臨床分離株のcefditorenに対する感受性サーベイランス
佐野 和三池野 廣幸横澤 光博
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キーワード: セフェム系薬, 感受性
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2000 年 48 巻 6 号 p. 383-395

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抄録

Cefditoren (CDTR) に対する各種臨床分離株の感受性推移を3次にわたる収集期間で検討した。被験菌は第1次調査として, 1995年4月より6月までの3か月間に臨床材料より分離された23菌種805株を, 第2次調査として1996年7月より1997年6月までの1年間に分離された23菌種769株を, 第3次調査として1998年7月より1999年6月までの1年間に分離された22菌種821株をそれぞれ収集した。第2次, 3次調査時に収集した各種の被験菌の感受性は, 第1次調査時に分離された被験菌のそれらとほぼ同様な傾向を示した。しかし, Streptococcus pneumoniaeの感受性は第2次調査時に収集した菌が低い傾向にあった。Haemophilus influenzaeに対する抗菌力は各抗菌薬とも, 3回を通じて大きな変動はなく, MIC90でCDTRの0.025-0.05μg/mLがもっとも優れていた。しかし, 第3次調査では0.20μg/mLのMIC値を示す菌が1株分離された。腸内細菌科の菌種に対する各抗菌薬の抗菌力は第1次, 2次, 3次の調査でほぼ同様で良好であったが, 第3次調査時にはEscherichia coli, Klebsiella Pneumoniaeでcefixime (CFIX) を除く他の抗菌薬に対して25μg/mL以上のMIC値を示す株が数株ずつ分離された。嫌気性菌の各抗菌薬に対する感受性に変動は見られなかった。以上, 3次にわたる調査において収集した各種菌株に対する経口β-ラクタム薬の抗菌力に大きな変動は認められなかった。CDTRはグラム陽性菌から陰性菌まで幅広い抗菌スペクトラムを有し優れた抗菌力を示し, 各菌種に対する発売後の感受性の低下は少なかった。特に呼吸器感染症起因菌に対してCDTRは強い抗菌力とバランスのよい抗菌力を示した。

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