日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
各種抗菌薬に対する臨床分離株の感受性サーベイランス
その1 1998年分離グラム陽性球菌および嫌気性菌
木村 美司吉田 勇東山 伊佐夫佐々木 緊
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 48 巻 8 号 p. 585-609

詳細
抄録

1998年に国内各地の14施設において, 種々の臨床材料から分離された好気性グラム陽性球菌22菌種919株, ならびに別途収集株を含む嫌気性菌22菌種170株について, 寒天平板希釈法で各種抗菌薬の抗菌力を測定した。Staphylococcus aureusのなかで, methicillin-resistant S.aureus (MRSA) は51.7%と高い分離頻度であった。MRSAに対し優れた抗菌力を示したのは, vancomycin,(VCM), teiooplanin (TEIC), arbekacin (ABK) とsulfamethoxazole-trimethoprimであり, MIC90はいずれも1.56μg/mLであった。Staphylococcus epidermidisに対しては, VCM, ABK, minocychneならびにcefbtiamが優れた抗菌力 (MIC90≦3.13μg/mL) を示した。Streptococcus pneumoniaeにおけるpenicillin (PC)-intermediate S. pneumoniae+PC-resistant S. pneumoniae (PISP+PRSP) の割合は46.8%であった。これらPISP+PRSPに対し, cefpirome, cefoselis, carbapenems (CBPs), tosufloxacin, TEICおよびVCMは, 0.39μg/mL以下の濃度で測定全株の発育を阻止した。Enterococcus faecalis, Enterococcus faeciumに対して優れた抗菌力を示したのは, VCMとTEICであり, MIC90は3.13μg/mL以下であった。MRSAおよび腸球菌属を含めMIC測定を行ったすべてのグラム陽性球菌において, VCM耐性株は認められなかったが, TEICではStaphylococcus haemolyticusなどで耐性株が検出された。嫌気性菌では, Peptostreptococcus spp. には, cefcapene, Clostridium difficileには, VCM, benzylpenicillin, また, Propionibacterium acnesには, S-1090が優れた抗菌力を示した。Bacteroides fragilis group., Prevotella spp. には, CBPs, faropenem (FRPM) とセフェム薬のflomxefが優れた抗菌力を示した。嫌気性菌全般に対しては, CBPsとFRPMの抗菌力が優れていた。しかし, Bactmides frasilisに対するCBPsの抗菌力に低下傾向がみられ, 今後の動向に注意が必要と考えられた。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
次の記事
feedback
Top