日本化学療法学会雑誌
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Explant培養法を用いた鼻粘膜上皮の増殖分化に対するマクロライド系薬の影響
藤原 啓次山中 昇
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2000 年 48 巻 9 号 p. 732-736

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抄録

マクロライドの少量長期投与は副鼻腔気管支症候群や慢性副鼻腔炎に対して広く用いられ, その臨床的有効性については多数報告されているが, 作用機序については依然解明されていない点も多い。特に上皮に対しての直接の作用についてはほとんど検討されていないのが現状である。今回われわれは鼻粘膜上皮小片から周囲に伸び出す上皮 (Outgrowth) を用いたExplant培養法によりroxithromycin (RXM) による鼻粘膜上皮の増殖度, 分化度について検討した。方法は手術時に採取した鼻粘膜, 副鼻腔粘膜 (10名) の繊毛細胞の多い部分を小片に細切し, 4週間培養した。培養後3~4日目の培養上皮に培養液中のRXM濃度が1.0×10-4mol/L, 1.0×10-5mol/L, 1.0×10-6mol/L, 1.0×10-7mol/Lとなる群と, なにも加えない群で検討した。上皮の増殖部はOutgrowth部位の面積をRXM添加前の面積との差で算出した。上皮の分化はOutgrowth部位の繊毛細胞数をカウントし, RXM添加前の繊毛細胞数との差で算出した。上皮の伸び率は第1週から第4週にかけてRXM 1.0×10-5mol/Lと10-6mol/L添加群ではなにも加えない群, 1.0×10-4mol/Lと1.0×10-7mol/L添加群に比べて大きい増殖を認めた。繊毛細胞の出現率においては1.0×10-5mol/Lの濃度のRXMを加えた群で他の群に比べて多い傾向を認めた。今回の結果では低濃度のRXMにおいて, 抗生剤本来の作用以外に直接上皮の増殖および分化を促す作用が示唆された。またこの結果はRXMによる副鼻腔炎に対する作用機序の一部であり, 濃度特異性が認められたことは, 少量投与の濃度を決定する上でも役立つものである。

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