日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
産婦人科領域の尿路感染症における抗菌薬の適正使用
三鴨 廣繁玉舎 輝彦
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 49 巻 7 号 p. 449-453

詳細
抄録

産婦人科領域においても尿路感染症の占める割合は高い。主として外来患者で見られる急性期の感染症は, 経口ペニシリン, 経口セフェム, あるいはニューキノロン薬で容易に治癒するものが多い。しかしながら, 産婦人科領域では, 妊娠および授乳中といった周産期, 閉経後女性などのホルモン環境などに特徴がある。産婦人科領域においても, 尿路感染症の主な原因菌はEscherichia coliなどの好気性グラム陰性桿菌である。女性の尿路感染症は, 性器感染症の場合と同様, ほとんどが上行性感染であることからも, 細菌性腟症と深い関係があり, 腟内細菌叢を知ることが重要であることが理解できる。また, 流・早産と感染症の関係が明らかにされてきており, 妊娠中の尿路感染症と流・早産についても報告がある。妊娠中および授乳中の女性におこった尿路感染症の治療にあたっての第一選択薬は, 臨床効果に安全性を考慮するとβ-ラクタム系抗菌薬になる。担癌患者の尿路感染症では, Enterococcus属, Pseudomonas aeruginosa, Enterobacter属, Citobacter属などの検出頻度が増加しているため, 治療にあたっては, これらの菌種も考慮する必要がある。閉経後の女性では, 性活動性により, 尿路感染症の発症頻度は明らかに異なる。この原因として, 閉経後女性ではエストロゲン (特にエストラジオール) の低ドにより, 腟内細菌叢が変化していることが考えられる。腟内細菌叢では, 特に, Lactobacillus属の菌量の減少が尿路感染症の発症頻度に関係している。閉経後の女性における尿路感染症の治療にあたっては, 何らかの形でホルモン補充療法を付加することが, 治癒を早め, 再発を防ぐ。Chlamydia ctrachomatisは, 近年, 若年層を中心として増加傾向にあるSTDであるが, 膀胱炎症状を主訴として来院しながら, 尿沈渣などの検査所見からは尿路感染症の診断がつかないため精査するとC. trachomatisの関与する尿道症候群であることが判明したというような症例も増加しており注意すべきである。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事
feedback
Top