日本化学療法学会雑誌
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喀痰より分離されたインフルエンザ菌のβ-ラクタム系薬耐性化と患者背景との関係
綿貫 祐司小田切 繁樹高橋 宏吉池 保博小倉 高志庄司 晃冨岡 敏昭
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2001 年 49 巻 8 号 p. 489-495

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抄録

1998年4月1日~12月31日の9か月間に喀痰よりインフルエンザ菌が分離された呼吸器疾患患者125例のべ144検体を対象とした。インフルエンザ菌は, β-ラクタマーゼ産生株でsulbactam/ampicillin (SBT/ABPC) 耐性のβ-lactamase positive amoxillin clavulanate resistant (BLPACR: 12株) と, SBT/ABPC感受性のβ-lactamase positive amoxillin clavulanate sensitive (BLPACS: 8株), およびβ-ラクタマーゼ非産生株でABPC耐性のβ-lactamase negative ampicillin resistant (BLNAR: 13株) とABPC感受性のβ-lactamase negative ampicillin sensitive (BLNAS: 111株) の4群に分類した。BLNASのみを感受性菌 (77.1%) とし, 他の3群をβ-ラクタムー薬耐性菌 (33株, 22.9%) として患者背景・病態と耐性菌率の関係を検討した。年齢, 性別, 喫煙歴, 基礎疾患・合併症の有無, 罹患年数や, 肺の器質的変化の指標とした1秒率・PaO2と同菌の耐性化との関係は認められなかった。年間の感染発症回数が4回以上の症例では検出されたインフルエンザ菌の64%が耐性株であったが, 4回未満の症例では耐性菌率は20%に過ぎなかった。非感染時より膿性・粘膿性痰を喀出する39症例中14例36%では検出されたインフルエンザ菌はβ-ラクタム薬に耐性であったが, 非感染時に喀痰がないか粘性痰であった105症例では耐性菌率は18%であった。緑膿菌持続感染患者から検出されたインフルエンザ菌の耐性菌率は42%, インフルエンザ菌反復感染症例より検出された同菌の耐性菌率は29%であったが, 持続して検出される菌がない症例では同菌の耐性化率は19%であった。マクロライド連投の53症例では耐性菌率は32%と, 非投与症例の18%に比べ高値であったが, 過去の抗菌薬投与歴と同菌の耐性化との関係は明らかではなかった。β-ラクタム薬耐性インフルエンザ菌検出のリスクファクターとして,(1) 年間の感染発症回数が4回以上,(2) 非感染時の喀痰の性状が膿性・粘膿性痰,(3) 緑膿菌・インフルエンザ菌定着症例,(4) マクロライド連投を要する症例があげられる。

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