日本化学療法学会雑誌
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緑膿菌に対するbiapenem, meropenemおよびceftazidimeの抗菌作用の比較
生方 公子千葉 菜穂子小林 玲子長谷川 恵子日暮 芳巳岩井 友美奥住 捷子紺野 昌俊
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2002 年 50 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

2001年に分離された緑膿菌に対するbiapenem (BIPM), meropenem (MEPM), imipenem (IPM), およびpanipenem (PAPM) のカルバペネム系薬4薬剤を含む計10薬剤の抗菌力を寒天平板希釈法によって測定した。カルバペネム系薬のMIC50とMIC90は, それぞれ次のようであった。BIPMは1μg/mLと16μg/mL, MEPMは0.5μg/mLと8μg/mL, IPMは2μg/mLと32μg/mL, PAPMは8μg/mLと32μg/mLであった。BIPMの感受性はIPMとの間で他薬剤よりも高い相関が認められた (γ=0.9218)。臨床分離の緑膿菌6株に対するMIC以上におけるBIPMの殺菌効果は, MEPMおよびceftazidime (CAZ) のそれよりも優れ, またその殺菌作用は10%の新鮮ヒト血清添加によってさらに増強された。緑膿菌#8株をBIPMのMIC (1μg/mL) で2時間処理した際のPAE効果は, 10%のヒト血清を添加したBIPMでのみ認められた。緑膿菌#8株からのPBPsに対する3薬剤の結合親和性は, [3H] benzylpenicillinを川いて解析され, MICにおける結果は次のようであった。BIPMはPBP4 (100%)>>PBP1A/1B (73.9%)>PBP 3 (69.0%)>PBP2 (61.2%); MEPMはPBP 3 (92.5%)>PBP4 (87.1%)>>PBP1A/1B (60.0%)>PBP2 (58.9%); CAZはPBP 3 (100%)>PBP 1A/1B (96.0%)>>PBP2 (51.4%)=PBP4 (51.2%) の順であった。PBPsに対する親和性の特徴はこれら3薬剤を緑膿菌に作川させた後の形態変化ともよく下一致していた。BIPMのMIC以上に晒された後の細胞は桿菌からスフェロプラストあるいはバルジ形成への形態変化を生じ, しかも細胞表面に強い損傷が認められた、。溶菌は10%のヒト新鮮血清を添加すると有意に増強された。MEPMに晒された際にはバルジ形成を伴うフィラメント細胞, およびCAZではフィラメント細胞のみの形態変化がそれぞれ観察された。両薬剤によって処理された細胞は, 細胞表面の損傷はほとんど観察されなかった。BIPMのMIC以上において短時間で生ずる強い殺菌作用は, PBP4に対する高い親和性と, MICよりも低い濃度からのPBP1A/1B, PBP3, PBP2に対する高い親和性によってもたらされるものと推測された。

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