日本化学療法学会雑誌
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Cefazolinの感染性滲出液中移行に関する基礎的検討
Bolus静注と点滴静注の比較
戸枝 弘之
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2003 年 51 巻 8 号 p. 477-484

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抄録

Escherichia coli ATCC 25922によるラット皮下感染モデルを用い, cefazolin (CEZ) を10mg/kgあるいは20mg/kg投与した後の滲出液中の細菌を定量培養し, bolus静注投与 (IV) と点滴静注投与 (DIV) における抗菌効果を比較検討した。また血中, 滲出液中のCEZ濃度を経時的に測定し, 薬物動態について検討した。10mg/kg投与群と20mg/kg投与群ともIV群は1時間および2時間DIV群に比ベ有意に強い抗菌効果を示した, また10mg/kgIV群は投与量が半分であるにもかかわらず, 20mg/kgDIV群よりも強い効果を示した。血中における最高薬剤濃度 (Cmax) はIV群がDIV群に比べ1.3~3.8倍高値であった, しかし, DIV群の血中消失半減期 (T1/2) はIV群より0.6~2.1時間長いため, 試験菌の最小発育阻止濃度 (MIC;2μg/mL) 以上の濃度を維持した時間 (time above MIC) はDIV群の方がIV群より好成績であった (10mg/kg投与ではIV群;2.8時間, 1時mDIV群;3.7時間, 2時間DIV群;4.4時間, 20mg/kg投与ではIV群;2.9時間, 1時間DIV群;5.9時間, 2時間DIV群;4.6時間)。滲出液中におけるCEZのCmaxは血中の1/10~1/20と低値であったが, T1/2は血中より0.8~2.0時間長かった。滲出液中におけるCEZのtime above MICは血中に比べて短く, 血中とは逆にIV群の方がDIV群より好成績であった (10mg/kg投与ではIV群;1.4時間, 1時間DIV群;0.1時間, 2時間DIV群;0時間, 20mg/kg投与ではIV群;2.7時間, 1時間DIV群;1.8時間, 2時間DIV;0時間)。CEZのように蛋白結合率の高い薬剤に関しては, 高い血中濃度が得られるbolus静注投与が薬剤の組織移行を良好にし, 強い抗菌効果につながると考えられた。

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