日本化学療法学会雑誌
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A群溶血レンサ球菌性咽頭炎・扁桃炎例に対する経口抗菌薬投与後の除菌率の比較
中山 栄一砂押 克彦鈴木 悦子小林 玲子百村 芽衣舟木 尚美飯塚 雄俊近藤 康夫田島 剛生方 公子
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2004 年 52 巻 8 号 p. 426-432

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抄録

2001年2月~2003年7月までの問に, 博慈会記念総合病院小児科外来を受診し, 臨床症状からA群溶血レンサ球菌による咽頭炎・扁桃炎が疑われ, 迅速抗原検査によってA群溶血レンサ球菌が陽性と判定された622名を対象とした。これらの症例に対し, amoxicillin (AMPC), cefaclor (CCL), cefditorenpivoxil (CDTR-PI), cefcapene-pivoxil (CFPN-PI), clarithromycin (CAM), およびazithromycin (AZM) のいずれかを曜日ごとに薬剤を変える投与方法により除菌率の比較を行った, 投与期間終了後, その時点から7日目に再び細菌検査を行い, 除菌の有無を確認した。
除菌率はCDTR-PIの投与例で (149/158例: 94.3%) と最も優れ, 次いでAMPC (98/110例: 89.1%), CFPNlPI (111/128例: 86.7%), CAM (63/75例: 84.0%), CCL (65/80例: 81.3%), そしてAZM (54/71例: 76.1%) の順であった。各薬剤問における除菌率には有意差が認められた。CDTR.PIとAMPCとの問には有意差を認めなかったが, CCL, CFPN-PI, およびCAMとの問には危険率5%以下で有意差を認め, さらにAZMとの問には危険率1%以下で明らかな有意差を認めた。特にCAMあるいはAZM投与例において, マクロライド耐性遺伝子保持株が起炎菌であった11例は全例で除菌されていなかった。
以上の成績から, A群溶血レンサ球菌感染症の治療に際し, マクロライド系薬よりもβーラクタム系薬のほうがより適切であることが示唆された。

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