日本化学療法学会雑誌
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Biapenemの感染症患者および健康成人における母集団薬物動態解析
佐藤 信雄田中 由香利渋谷 幸代芝崎 茂樹
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2006 年 54 巻 1 号 p. 7-17

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抄録

成人感染症患者等および健康成人において得られたカルバペネム系薬biapenem (BIPM) の血漿中濃度を, Nonlinear Mixed Effects Model (NONMEM) を用いて解析し, 母集団薬物動態パラメータを算出した。解析には, 成人感染症患者等および健康成人の計66例, 384ポイントの血漿中濃度および患者背景を用いた。薬物動態モデルとしては点滴静注時の2-コンパートメントモデルを使用し, BIPMの薬物動態に影響を与える共変量として年齢 (Age), 体重 (Wt), およびクレアチニン・クリアランス (Ccr), ならびに因子として薬物動態に対する疾患の有無の影響を検討した。その結果, 全身クリアランス (CL) にはCcrの, 体循環血コンパートメントの分布容積 (V1) にはWtの影響が認められた。末梢循環血コンパートメントの分布容積 (V2) にはWtの影響は見出されなかった。これらの結果をふまえて母集団薬物動態解析を行った結果, BIPMの母集団平均パラメータはCL=0.0720×Ccr+3.04 (L/h), V1=0.0990×Wt (L), 体循環血コンパートメントと末梢循環血コンパートメントの間の移行クリアランス (Q) 313.5 (L/h), V2=7.00 (L) であった。内部バリデーション法の一つであるBootstrap法によって, モデルバリデーションを行った結果, 確立したモデルは妥当であると考えられた。また, 求めた母集団平均パラメータよりシミュレーションした血漿中濃度推移およびMICを用いて, 種々の想定患者背景におけるTime above MIC (T>MIC)(%) を推定し, BIPMの投与設計を考案するうえでの一助となる一覧表を作成した。

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