日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
誤嚥性肺炎の起炎菌として高頻度に分離される口腔内細菌の薬剤感受性
金子 明寛山根 伸夫渡辺 大介水澤 伸仁松崎 薫長谷川 美幸佐藤 弓枝小林 寅哲
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 55 巻 5 号 p. 378-381

詳細
抄録

誤嚥性肺炎は, 嚥下機能障害から口腔内容物を誤嚥することに起因する肺疾患であり, 高齢者を中心に増加している。誤嚥性肺炎の起炎菌は, 上述した発症機序から口腔内細菌, 特に嫌気性菌の頻度が高いとされている。
今回, 口腔外科領域由来菌株で, かつ誤嚥性肺炎の代表的な起炎菌とされるStreptococcus anginosus group, Peptostreptococcus species, Prevotella species, Fusobacterium speciesに対し, 注射用抗菌薬piperacillin, tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC), ampicillin, sulbactam/ampicillin (SBT/ABPC), ceftriaxone, cefepime, meropenem (MEPM), clindamycinの感受性を測定した。4菌種いずれに対しても高い抗菌活性を示したのは, TAZ/PIPCおよびSBT/ABPCのβ-lactamase阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬とMEPMであった。
本結果は, 口腔外科領域および歯性感染症同様口腔内常在嫌気性菌が主要起炎菌となる誤嚥性肺炎に対するβ-lactamase阻害薬配合ペニシリン系抗菌薬の有効性を示唆するものであり, 特に, TAZ/PIPCについては誤嚥性肺炎治療の上位選択薬とする海外のガイドラインの根拠を裏づける成績であった。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事
feedback
Top