日本畜産学会報
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技術報告
肉牛枝肉形質と肥育過程における各種血漿成分の関係の解析
林 孝甫立 京子中西 直人阿部 亮佐藤 光行藤田 雄一安留 浩
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2003 年 74 巻 4 号 p. 537-545

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抄録

黒毛和種肥育牛の枝肉形質と肥育中のビタミンAを含む各種血漿成分との関係を解析することを目的として本研究を実施した.1999年11月から2000年10月までの間に全国畜産農業協同組合連合会傘下の16牧場に導入され,ビタミンAを制御した飼料を給与された黒毛和種去勢牛,雌牛合計141頭の枝肉測定値および肥育過程における血漿成分に関するデータを解析の対象とした.肥育期間における血液採取はおおよそ60日間隔で実施し,血漿成分の分析項目はビタミンA,総タンパク,グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ活性(GOT),γ-グルタミルトランスペプチダーゼ活性(GTP),尿素態窒素,総コレステロールの6項目とした.最初に枝肉重量などの枝肉形質を目的変数とし,性別,父牛,出荷年月を分散要因とした最小二乗法による分散分析を行った.次に血漿成分と枝肉形質の関係を解析するために目的変数を肉質に関する形質とし,独立変数を血漿成分とした重回帰モデルを利用し,重要度の高い変数を探索した.さらに重要度が高いと判定された変数を連続変数とした共分散分析を行った.その結果,1)血漿中のビタミンA,総タンパク,尿素態窒素,総コレステロールには父牛の有意な効果がある,2)肥育後期の血漿中ビタミンA濃度を低下させるような条件におくとロース芯面積が大きくなる,3)肥育初期の血漿中総タンパク濃度が高ければ皮下脂肪が厚くなる可能性がある,4)父牛の効果とは別に肥育後期の血漿中ビタミンA濃度が低下するならば,その枝肉の脂肪交雑(BMS)の向上が期待できる,5)肥育後期のビタミンAの高水準は肉色を濃くする,などの結論が得られた.

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© 2003 公益社団法人 日本畜産学会
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