反芻動物は第一胃(ルーメン)内の微生物の働きにより,人が直接利用できない繊維性飼料を利用し,高品質なタンパク質に変換できる.近年,次世代シーケンサーの発達により,ルーメン微生物群の構成や機能が詳細に明らかになりつつある.また家畜育種学の分野では,ホスト個体のゲノム情報と微生物の情報を組み合わせて複雑な形質の分析と予測を行う研究がこの10年間に実施されている.また,これまでにもルーメン機能全体のメカニズムを表すルーメン数学モデルが開発されてきたが,近年,ルーメン機能の予測レベルを向上させる目的で,ルーメン機能に関する数学モデルにルーメン微生物のオミックスデータ(ゲノミクス,トランスクリプトミクス,プロテオミクス,メタボロミクスなどの生体内の分子情報に関するデータ)を統合する試みが行われている.本総説では,メタゲノム解析を用いたルーメン微生物叢およびウイルス叢の研究法と,育種への応用方法,そしてルーメン内の栄養代謝に関する微生物モデルについて解説する.
多産系母豚の授乳期間におけるリジン要求量を明らかにするため,2~6産次のLW種多産系母豚32頭(分娩7日前の体重264±16 kg)を供試し,有効(SID)リジン含量が0.69%,0.83%,0.94%および1.07%の飼料を分娩2日後から28日後の離乳まで給与した.授乳開始頭数は13.3頭だった.母豚の飼養成績,子豚の増体および損耗率に試験区間に差はなかったが,2週と3週の一腹子豚増体量では,0.69%区に比べて0.83%区で大きかった.乳中の成分や免疫指標において試験区間に差はなかった.血漿遊離リジンおよび血漿尿素窒素の反応を母豚の1日SIDリジン摂取量あるいは飼料中SIDリジン含量に対する折れ線モデルに当てはめ,1日当たりのSIDリジン要求量および飼料中SIDリジン含量を推定した.本研究で用いた多産系母豚の授乳4週目(授乳頭数12.66頭,子豚の日増体量0.264 kg/日)の1日当たりのSIDリジン要求量は62.1 g,要求量を満たす飼料中SIDリジン含量は0.80%~0.85%であると推定された.
カラス類は電気設備,特に配電柱に営巣することがあるが,これは停電などの故障の原因となり得る.中部電力株式会社(中電)では,カラス類の営巣による故障を防止するために,中部地区における2017~2022年の6年間の詳細な営巣記録を保管している.本研究では,営巣記録を分析することにより,カラス類に営巣されやすい,あるいはされにくい配電柱の特徴を明らかにすることを試みた.その結果,5タイプに分けた配電柱で営巣される割合に差があり,開閉器有,変圧器有,あるいは高圧線の接続がある配電柱は営巣される割合が高く,低圧線のみの接続,あるいは電線の接続がない配電柱は営巣されにくいことが明らかとなった.また,鉄塔と一級河川の存在が,カラス類による配電柱への営巣を減少させる可能性が示された.
アミノ酸バランス改善飼料の給与が交雑種去勢牛の増体,枝肉成績,リブロースの脂肪酸組成,および尿中窒素排せつ量に及ぼす影響を検討した.試験1で,肥育中後期に慣行配合飼料を与えた対照区12頭と,配合飼料のタンパク質を減らしてバイパスリジンとバイパスメチオニンを補給した試験区12頭を比較した.日増体量は対照区1.14 kg/日,試験区1.20 kg/日で有意差は認められなかった.枝肉重量,胸最長筋面積,ばらの厚さ,皮下脂肪の厚さ,牛脂肪交雑基準などの枝肉形質,リブロースの粗脂肪含量にも有意な影響は認められず,交雑種去勢牛の肥育中後期にアミノ酸バランス改善飼料を与えても生産性は維持された.試験2で,肥育中期の4頭に慣行配合飼料とアミノ酸バランス改善飼料の2種類の飼料を与えて,1期21日間の2×2クロスオーバー試験を実施した結果,アミノ酸バランス改善飼料を与えると尿中窒素排せつ量は有意(P<0.05)に減少することが確認された.