2017 年 88 巻 4 号 p. 425-430
黒毛和種の損徴は品種の特徴を損なうだけでなく,経済的損失となり得るものもある.本研究では,損徴発生率の低減に関する知見を得ることを目的に,1999年~2015年の鹿児島県産黒毛和種雌子牛511,337頭の記録を用いて,白斑,舌の異常,乳頭の異常,被毛の異常について基礎的な調査を試みた.全データにおける損徴発生率は被毛の異常の0.29%から白斑の3.68%の範囲であり,年次推移はすべて増加傾向を示した.白斑の発生部位も年次により変化した.白斑では,近交度が高まると発生率が有意に上昇した(P<0.05).被毛の損徴以外では,母牛の損徴の有無が子牛の損徴発生率に有意に影響した(P<0.01).さらに,白斑と舌の異常においては,損徴を持つ母牛と持たない母牛の子牛の損徴発生率を種雄牛別に算出したところ両者に高い正の相関が得られ,両親の組合せを考慮することで損徴の発生を低減できる可能性を示した.