日本畜産学会報
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総説
食用および飼料用のための昆虫の生産と利用に関する研究動向と今後の課題
広岡 博之
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2023 年 94 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

本総説では,主として食用にコオロギ,飼料用にアメリカミズアブの幼虫,機能性成分を期待してシロアリについて幅広い視点からこれまでの関連研究を概観し,今後の課題について検討した.コオロギとアメリカミズアブの幼虫の生産は,家畜生産と比べて飼料効率が高く,温室効果ガスの排出量が低いものの,飼育環境の温度調整のためエネルギーの利用性において劣ることが報告されている.昆虫の家畜化,機能性,ウェルフェアや生命倫理,消費者の受容性についても先行研究を紹介した.コオロギやアメリカミズアブの大量生産のための育種改良には,家畜やそのモデル動物としての昆虫の育種改良に関する研究蓄積が,また飼育管理には家畜の飼養標準策定のための研究手法が役に立つと考えられた.一方,シロアリについては,飼育環境下での増産に成功し,さらに人の健康に関連する機能性成分が発見できれば,その利用価値は大いに高まると期待できる.

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