2026 年 97 巻 2 号 p. 69-82
香りは黒毛和種牛肉の食味性にとって重要な要因であるものの,香気成分の分離濃縮法の多くは煩雑であるため,香気成分と食味性に関する研究は少ない.そこで,脂肪交雑量の多い黒毛和種牛肉において多検体測定に適した香気成分の分離濃縮法と,高感度測定が可能なガスクロマトグラフートリプル四重極質量分析計によるMRM測定法を組み合わせた香気成分定量法を検討した.妥当性確認試験では,主要な香気成分の真度は44~131%,併行精度は2.8~10.0 RSD%であった.一部の化合物では試料の粗脂肪含量が高くなるにつれて真度が著しく低下したが,本法は既往分離濃縮法と比べて操作性が簡便であり,併行精度も良好なことから,多検体の黒毛和種牛肉の香気成分定量に適した手法であると考えられた.また,本法により煮熟肉と焼成肉の香気成分を測定したところ,黒毛和種牛肉は輸入牛肉に比べ総じて香気成分含有量が多い特徴が明らかとなった.