日本畜産学会報
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硫酸銅の家兎排卵生起作用の本態に關する研究
(1) 腦下垂體前葉の細胞組織學的研究
内藤 元男
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1946 年 17 巻 1-2 号 p. 14-30

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抄録
銅鹽の家兎排卵生起作用本態の究明と同時に腦下垂體前葉細胞の顆粒消長樣相を見んとして本研究を行ひ、供試家兎を發情區と人工排卵區との2區に分ち比較檢討した。その成績並に考察を要約すれば、
(1) 腦下垂體生體重指數に就ては總量に於ても前中葉量に於ても兩區間に差が無い。
(2) 細胞細織學的に見て兩區共その腦下垂體前葉は活動樣相を呈するが、發情區に比し、人工排卵區ではα,βの相對値並に顆粒内容に於て減退が見られる。但しβでは發情區にあつても相當顆粒を喪失したものがある。
(3) 之は銅鹽が腦下垂體前葉を刺戟した事を示し、もし細胞質顆粒とホルモンとの間に關係があるとすれば、腦下垂體前葉より生殖腺刺戟ホルモン(F. S. H.並にL. H.)を出させたものと考へられる。又同じ假定の下に於て兩區の生理的状態と腦下垂體前葉細胞の樣相より、細胞とホルモンとの關係はαがL. H.に、βがF. S. H.に關係すると思はれる。
(4) 實驗上發情の究明を必要とし、膣垢,外陰部.學動を併せ調べ、之が存在を認めた。
(5) 卵巣には兩區共成熟卵胞(試驗區では破裂したものをも加へて)多く、家兎の發情は之の多い時に當ると考察し、發情兎に對しては使用した硫酸銅量にて24時間内に完全に排卵を得る事を知つた。
擱筆に當り終始御懇篤なる御鞭撻、御助言を賜りたる恩師佐々木清綱教授、増井清教授、實驗の遂行上御懇切なる御指導と御便宜を賜りたる加藤嘉太郎助教授、星冬四郎助教授に對し深甚なる謝意を表する。
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