日本畜産学会報
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硫酸銅の家兎排卵生起作用の本態に關する研究
III. 幼若家兎腦下垂體前葉に及ぼす影響
内藤 元男
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1946 年 17 巻 3-4 号 p. 116-118

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抄録

硫酸銅が腦下垂體前葉の生殖腺刺戟ホルモン生成に關與するか否かを檢する爲幼若兎に對する影響を調べた。
生後5週齡の幼若牝家兎に硫酸銅5mg含有液を耳靜脈内に1囘注射し24時間後屠殺し,前葉及び卵巣に就て無處理のものと比較檢討したのであるが,
(1) 腦下垂體,同前葉は共に絶對量に於ても,生體重に對する指數に於ても試驗區の方が大であつた。
(2) 前葉の細胞組織學的樣相は對照區に比し試驗區でα,βの相對値低く,面もβでは顆粒喪失中のものが多く,顆粒形成中のもの及び充滿せるものが少く,硫酸銅は顆粒喪失即ちホルモン放出には關與するがその形成には關與しない事を知つた。
(3) 卵巣には兩區の間に認むべき差が現れなかつた。之は卵巣に反應を起させるに必要な前葉ホルモンが尚量的に十分存在しなかつた爲と思はれる。
第I. 第II並にこの第III實験による硫酸銅の家兎排卵生起作用に關する研究結果を要約すれば硫酸銅は主として腦下垂體前葉を刺戟し,生殖腺刺戟,ホルモンを放出せしめ,それが排卵に十分なものであれば排卵を起す。併しホルモンを前葉に生成させる刺戟は有しないものと思はれる。

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