日本畜産学会報
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馬運動間の呼吸に関する実驗的研究
II 特に農耕作業中の呼吸数変化について
沢崎 坦瀬戸 善夫三浦 高義下田 与四雄
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1952 年 23 巻 1 号 p. 13-18

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抄録
東大農学部附属牧場繋養役馬3頭を用い,犁による耕起作業,カルチベーターによる中耕除草作業,ハローによる碎土作業並びに対照として自由歩行について作業中の呼吸数変化,牽引抵抗及び呼吸数,脈搏数,体温の恢復状況を観察し次の結果を得た。尚,作業中の呼吸数計測は電気的拡声装置を用いて呼出気音を拡大し,その数を以つて呼吸数とした。作業量は120m 23往復(A),65m 14往復(B)の2種で前者は耕起,中耗除草,自由歩行につき,後者は耕起と碎土について行つた。
1) 作業中呼吸数の変化
作業中呼吸数はゆるやかな波状曲線を基線として動搖しつゝ増加し,ある値に達すると平衡状態に入る。波形及び平衡状態に移行する時期は個体によつて相違するものゝようであり,作業中呼吸数の増加程度はハローは犁より,犁はカルチベーターより著しい。
2) 歩行時呼吸数と廻転時呼吸数との関係
犁及びカルチベーターでは一般に歩行時呼吸数は廻転時呼吸数より多くハローでは自由歩行の場合のように両者は近い数値を示している。従つて作業中の廻転は耕起及び中耕除草作業のように作業機の抵抗が完全に除かれる時期の繰り返される場合には役畜にとつて一時的な休息であるが,碎土作業のように連続抵抗の場合には休息にはならないものと考えられる。
3) 恢復状況
自由歩行に於いて各項目共に著しい変化を見ず,各作業については特に一定の傾向は認められなかつたが,作業直後の数値は各項目共作業別に相違し,作業種類との間に作業中の呼吸数増加と全く同様な関係が認めちれた
4) 作業の重さと呼吸数増加との関係
平均牽引抵抗は犁及びハローでは30~35kgm,カルチベーターでは20~25kgmで前二者に比しカルチベーターは明らかに軽く,犁とハローは平均牽引抵抗の上では差がないが実際作業上ではハローは犁より重い作業であるとされている。今作業中の呼吸数増加が作業の重さと正の相関々係にあるとすれば本実験に於ける役畜の作業中の呼吸数増加からも同一の事実が認められ,重軽作業が作業中呼吸数に及ぼす影響の相違することを明らかにした。
最後に御指導,御校閲を賜つた恩師岡部教授に深甚なる謝意を表し,又,種々の便宜を与えられた附属牧場々員各位,特に実験の為めの作業に従事された塚田•木村両君に厚く感謝する次第である
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