日本畜産学会報
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牧草の硝酸含量について
木部 久衛中路 勉岩田 武司斎藤 道雄
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1958 年 28 巻 6 号 p. 375-378

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抄録

本実験においては, 高原の畑作土壌に対する施肥の影響が, 牧草の硝酸含量にどのような変化を及ぼすかを, 生育時期的な消長をも含めて検討した。牧草にはオーチヤードとコモンベツチの2種を用いた。肥料としては, 硝酸ソーダ, 硫酸アンモン, 硫酸アンモンにヂシアンヂアミド添加, 硫酸アンモンに石灰窒素添加の各種を用いた結果, 次のごとき結論を得た。
1. オーチヤードおよびコモンベツチの硝酸含量は, 予期したよりも概して少なかつた。最も多い6月刈りの場合であつても, 固形物中の平均硝酸態窒素含量が, それぞれ前者で0.080%, 後者で0.067%に過ぎなかつた。なお同一肥料条件では, 固形物当たりの硝酸含量はオーチヤードのほうがコモンベツチよりも一般に高かつた。
2. 肥料として与えた硝酸態およびアンモニア態窒素は, 牧草の生育の初期と後期の硝酸含量に異なつた影響をおよぼした。初期には硝酸態肥料を与えたほうが, 牧草中の硝酸含量は多かつたが, 後期にはかえつて少なくなつた。硫酸アンモンにヂシアンヂアミドを添加した場合は, 一時的に土壌中の硝酸生成を抑制したが, 牧草の硝酸含量は低下せずにむしろ増加の傾向を示した。
3. 生育時期別の変化では, 両者とも5月から6月にかけて硝酸含量は最高に達し, 7月刈りの場合には著しく少なかつた。
4. 硝酸カリ含量 (牧草固形物中) として計算すれば最も多い場合でも, オーチヤードで0.50~0.64%, コモンベツチで0.43~0.54%となつた。この程度の含量ならこの牧草を牛や羊に飽食させても, 有害な結果は出ないものと思われる。

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