1961 年 32 巻 3 号 p. 180-184
1. フッ素(F)害が多く認められる熊本県阿蘇地方の牝牛39頭を対照とし,カルシウム給与の2つの群に分け同じ自然条件下で飼養しながら,後者には1日1頭当たりCaCO3 50gを給与し,10ヵ月間の体毛,血液および乳汁中のF含量を対照群と比較検討した.
2. F給与シロネズミ(1日1頭当たりF 2mg)および兎(1日1頭当たりF 20mg)にそれぞれCa 100mgおよび1gを飼料中に添加して,体内のF含量を測定し比較検討を行なつた.
3. 牛の体毛中のF含量は,Ca給与により,23例中19例が減少した.実験開始時のF含量を100とした場合,10ヵ月後では,対照群は96であつたのに対し,Ca給与群は87であつた.
4. 牛の血液中のF含量は実験開始時に比べて,2ヵ月後63%4ヵ月後68%,10ヵ月後83%といずれも減少していた.
5. 乳汁中のF含量は,実験開始時に比べて,2ヵ月後102%,4ヵ月後96%,10ヵ月後94%と,ほとんど変化が認められなかつた.
6. Ca給与により,シロネズミおよび兎の骨,歯,体毛中のF含量およびシロネズミの血液および脳髄中のFの集積が抑えられた.