日本畜産学会報
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凍結乳に関する研究
III. バターミルクの凍結保存
斉藤 善一五十嵐 康雄
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1966 年 37 巻 12 号 p. 478-484

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抄録

生クリーム又は洗浄クリーム(0.15N NaClに分散,再遠心を3回繰返した)からチャーニングにより得られたバターミルク,またはその類似物を-17°Cに保存し,凍結により生じる沈澱物の性状について研究を行なつた.60日以下の短期凍結保存の場合,解凍後遠沈(1300G,10分間)により分離される沈澱物は極く少量であり,TEAEセルロースを使用したカラムクロマトグラフィーによれば,カゼインが主体をなすと考えられた.然しながら,凍結保存期間の延長に伴い沈澱物のP/N比は増加し,燐含量の高い物質の不溶化が推察された.脂肪率35%のクリームから得られたバターミルクを6ヶ月凍結保存した場合100ml当り3.6g(乾物量)の沈澱物が分離され,その脂質(約14%の燐脂質を含む):蛋白は,酸度により多少影響され1:2~1:4であつた.
凍結保存100日のバターミルクから得られた沈澱物のカラムクロマトグラフ図は,主として2ピークから成り,第1のピークは脂肪球表層に由来するリポ蛋白と考えられ,第2のピークは位置およびP/Nよりα-カゼインに相当すると考えられた.洗浄クリームから得られたバターミルク類似物のクロマトグラフ図は,上記第1ピークに相当する主ピークと,それに続く若干の小ピーク群からなるが,長期の凍結保存により,そのいずれも沈澱物中に移行するものと思われた.
以上により,長期凍結保存の場合,リポ蛋白の不溶化が起り凍結乳の安定性にも影響を与えているものと推察された.

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