日本畜産学会報
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畜産における草地生態論
吉田 重治
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1971 年 42 巻 11 号 p. 537-543

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抄録

本来草地生態論は生態学領域に属するが,自然の生態系の生産体制と草地生産の実態とがよく一致するところから,草地を人為的生態系とみなせば,飼草群集や家畜その他の生物を含めた飼草生産体制の全貌を明らかになしうるから,草地生態論を草地研究の方法論として草地学を体系化したが,飼草生産向上のためには草地生態論を積極的に活用しなければ草地学の堅実な発展はありえない.従来適切な方法論を欠いたために,用途を異にした草地の植生構造を明確になしえず,ひいては生産解析もあいまいとなり,ために全般的に研究が低迷し,今後急速には現状以上には畜産に貢献しえないであろう.草地研究の第一段階はもはや終了したのである.
さらに草地学は境界学問といわれるが,草と家畜とは生産者と消費者の関係が正しい位置づけとその役割であり,それぞれの位置に,それぞれに主体制をもった学問が発展しなければならぬ.したがって一方的にではなく,双方から手を伸ばさぬかぎり畜産の健全な発展はありえない.畜産物の大量需要期に対応するために家畜群集を対象とした家畜生態論の急速な発展を期待する.

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