日本畜産学会報
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ラットにおける銅の尿中排出に及ぼす飼料中銅含量の影響について
加藤 啓介
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1971 年 42 巻 4 号 p. 168-172

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抄録

尿中のCuは,その量が摂取量や糞中排出量に比してきわめて少ないため無視されがちであるが,動物のCu栄養における尿中Cu量増減の意義を明確にするため,ラットに種々の量のCuを給与して,その尿中排出量をくわしく観察した.ラットはWistar系成熟雄ラット(体重約350g)10匹を用い,これに精製飼料を給与した.各区2匹ずつの5匹を設け,それぞれの匹のラットの飼料(乾物)中Cu含量が1.58,3.25,4.91,8.25および14.9ppmとなるよう硫酸銅の水溶液を添加した.その結果,尿中Cu量には飼料中Cu含量のちがいによる差はなかった.ただ,Cu無添加の区の2匹のうち1匹だけ,尿中Cu量が他のラットと比べてかなり少なかった.どのラットも試験開始後約1カ月間尿中Cu量が減少しつづけ,以後ほぼ一定となった.このことから,育成に用いた配合飼料の影響が,相当長期間残るものと推察される.摂取したCuの63~109%が糞中に排出された.つづいてCu添加量を増し,14.9~68ppmとしたところ,Cu添加量が多いほど尿中Cu量が増加する傾向があった.しかし,この増加は一時的なもので,約3週間後には再び各区間の差が不明確になった.Cu添加量を増加してから23日目の肝臓中Cu含量は,Cu添加量の多いものほど多くなっていた.育成用の配合飼料を給与したラットでは,精製飼料を給与したものに比して肝臓中Cu含量は多くならなかったが,尿中Cu量が多くなった.

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