日本畜産学会報
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牛乳の免疫タンパク質に関する研究
レプトスピラ菌による初乳抗体グロブリンについて
佐々木 正雄有馬 俊六郎
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1971 年 42 巻 4 号 p. 180-190

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抄録

初乳免疫グロブリンを病気への治療,予防に利用する一つの試みとして以下の実験を行なった.ワイル氏病原因菌(レプトスピラ菌)より不活化ワクチンを調整し,分娩前の乳牛に接種した.
1. 分娩直後に得られた親牛の血清,初乳はレプトスピラ菌に対して高い抗体活性を示した.またその初乳より調整した抗体グロブリンはモルモットにおけるレプトスピラ菌の感染を中和した.
2. ゲル〓過法により初乳抗体グロブリンをγ1Atypeとγ1M-typeとに分画し中和試験を行なったところ,γ1A-typeがγ1M-typeに比べやや中和能力が高かった.また親血清中の主グロブリンであるγ2-に相当する移動度をもったタンパク質は,初乳常乳および初乳摂取後の新生仔牛の血清中にもそれぞれ発見されなかった.
3. "径口抗体"としての抗体グロブリン利用の可能性を知る一段階として,抗体グロブリンをペプシン,トリプシン,キモトリプシンで消化して,抗体活性の消失程度を検討したが,いずれの場合にも大きな消失は認められなかった.しかしペプシン,トリプシン,キモトリプシンの併用では活性が1/10に減少した.

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