日本畜産学会報
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鶏のエネルギー代謝特に飼料の熱量増加に関する研究
I. 飼料の物理的消化の過程における熱量増加
桜井 斉
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1972 年 43 巻 8 号 p. 424-431

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抄録

飼料の熱量増加は,種々の要因により影響される.したがって,鶏の飼料を考える上に熱量増加も重要な問題となる.そこで,本研究においては,まず飼料の物理的消化の過程-飼料の筋胃における磨砕と不消化物の消化管輸送-と熱量増加について明らかにした.
飼料の筋胃における磨砕と熱量増加の試験には,飼料中トウモロコシが90%をしめ,その粒子が0.5mm以下のもの,数個に荒砕きしたもの,および種子そのものより成るものを給与し,熱発生量を測定し,筋胃活動にもとづく熱量増加を検討することにした.不消化物の消化管輸送と熱量増加の試験には,基礎飼料と,飼料中0~40%になる量の微粉の砂ならびにポリエチレンとを混合したものを,基礎飼料分で同量給与し,熱発生量を測定し,砂ならびにポリエチレン粉末の消化管輸送と熱量増加を検討することにした.なお,上記2試験には,50日令で体重1.0kgのブロイラー準専用種(ロード系♀×白色コーニッシュ♂)雄が用いられた.
その結果は,つぎのごとく要約される.
1. 飼料中トウモロコシの形態の差による飼料通過速度は,給与後4時間においては,その粒子が大きくなるにしたがっておそくなった.しかし,8時間後では通過速度はおおむね等しくなった.
2. 飼料給与後8時間にわたって測定した熱発生量は,飼料中トウモロコシの形態による差異を認めなかった.このことは,飼料の筋胃磨砕には熱量増加を伴わないことを示している.
3. 不消化物を基礎飼料に混合し増給した場合に,熱発生量および摂取代謝エネルギーに対する熱発生量の割合には,統計的に有意な差を認めなかった.
4. 熱発生量より熱量増加の実量を求め,それを摂取不消化物1g当りで示すと,不消化物が,20%を含む飼料により体重(kg)0.75当り19g増給された場合でも,0.05~0.09kcalにすぎず,また40%を含む飼料により50gを増給しても,0.16kcalにすぎなかった.すなわち,不消化物1gの輸送に消費されるエネルギーは,飼料容積には関係なく,不消化物給与量が増すにしたがって加速的に増加はしたが,それはほとんど無視し得る量にすぎなかった.

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