日本畜産学会報
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ニワトリの視床下部内局所注入のノルアドレナリンおよびセロトニンの盲腸運動に及ぼす作用
彦坂 治
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1972 年 43 巻 8 号 p. 470-478

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抄録

視床下部とその周辺には,ノルアドレナリン(NA)やセロトニン(5-HT)などが高濃度に分布し,これらを合む作動神経の存在が報じられている.そこで,直接視床下部内にNAと5-HTを微量注入して,盲腸運動に対する作用を長期的に装着したバルーン法をもちい観察記録した.さらに,視床下部の支配が盲腸に分布する交感神経終末部の受容体でどのような関連をもって遂行されるものか究明を試み,次の結果を得た.
1. 5-HT(20μg)を視床下部の前部領域のnucl. hypothalamicus anterior medialis, nucl. paraventri-cularius magnocellularis, nucl. preopticus medialisおよびdecussatio supraoptica dorsalisに注入すると,盲腸運動の促進および緊張がみられた.またnucl.hypothalamicus anterior medialisおよびdecussatiosupyaoptica dorsalisにNA(40μg)を注入すると盲腸運動の抑制がみられた.
NA(40μg)を視床下部の後部領域のnucl. hypo-thalamicus lateralisおよびnucl. hypothalamicus posterior medialisに注入すると,盲腸運動の一過性の抑制とこれに続く促進がみられた.この領域に5-HT(20μg)を注入すると盲腸の収縮数の減少がみられた.
この5-HT注入時の応答は,即時性興奮反応であり,NA注入時の応答は,遅延性興奮反応であった.これらの応答は,NAおよび5-HT感受性領域の活性化によってひき起されると推定した.
2. NAの視床下部内注入による盲腸運動の-過性抑制から促進にうつる反応は,アドレナリン作動性神経末梢のα-受容体とβ-受容体を介する変化であり,α-受容体が運動の促進をβ-受容体が運動の抑制または弛緩をもたらすのを確認した.

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