わが国において飼養されている日本ザーネン種山羊7地域集団,合計245個体より採取した血液試料中の酵素および非酵素蛋白25種類の構造を支配する27の遺伝子座位について,澱粉ゲル電気泳動法により蛋白多型の検索を行なった.その結果,hemoglobin-β,transferrin, plasma non-specificesterase, alkaline phosphatase, prealbumin-3, amylase, cell esterase D, phosphohexose isomerase(PHI), cell esterase-1, adenylate kinaseおよびpeptidase Bの合計11遺伝子座位において遺伝支配によると推定される蛋白多型が検出された.この内,PHI座位において欠失個体3例が発見された.各地域集団内の多型座位の割合(Ppoly)は11.1~29.6%,平均ヘテロ合体率(H)は3.3~6.2%,日本ザ-ネン種全体では,Ppoly25.9%,H5.0%であった.また各地域集団間の遺伝的距離(D)は群馬県農家と福岡県農家との間で最小の値0.0004を,岐阜大学附属農場と沖縄県農家との間で最大の値0.0065を示した.これらの値より日本ザーネン種の各地域集団間の遺伝子構成は均一であり,その遺伝的変異性は他家畜集団のそれと比較して低い値をとることが認められた.