日本畜産学会報
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低温環境下におけるめん羊の血中酢酸代謝の動態
砂川 勝徳藤田 正範高橋 潔彦坂 和雄大谷 文博安保 佳一庄司 芳男津田 恒之
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1983 年 54 巻 12 号 p. 770-776

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抄録

低温環境下における反芻家畜のエネルギー代謝に関与する低級脂肪酸の役割を明らかにするために,低温暴露4日後の給餌成めん羊を用いて血中酢酸の量的動態を同位元素希釈法によって測定した.常温(20°C,相対湿度70%)時と低温(0°C,相対湿度70%)暴露4日後に,給餌後3時間目から5時間にわたり頸静脈へ[1,2-14C]-酢酸ナトリウムを定速連続注入した.血中酢酸および呼気CO2の比放射能が定常状態に達する給餌後6~8時間に,血中酢酸の比放射能,呼気CO2の比放射能および熱発生量を測定し,それらの値をもとに酢酸代射のパラメーターを算出した.常温→低温環境において,血中酢酸の代謝回転速度(7.75±1.46→6.97±1.56mg/min/kg0.75)には有意な変化はなかった.酸化率(52.6±10.7→→64.5±10.2%)は有意に増加した(P<0.05)が,酸化寄与率(22.3±2.6→15.0±4.7%)は有意に減少した(P<0.01).また動物の全熱発生量は3.69±0.39→7.90±2.42kcal/hr/kg0.75へと著しく増加する(P<0.01)のに対し,酢酸由来の熱量は0.84±0.15→0.92±0.10kcal/hr/kg0.75と変化なく,したがって全熱発生量に占める酢酸由来熱量の割合は22.9±4.6→→13.1±5.5%へと有意に減少した(P<0.01).以上の結果から,低温環境下における給餌めん羊の血中酢酸の代謝回転速度は変化することなく,熱発生量の増加に対して,血中酢酸はほとんど貢献しないことが明らかになった.

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