日本畜産学会報
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軟脂豚肉の脂質の特性
大武 由之
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1983 年 54 巻 2 号 p. 80-89

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抄録

宇都宮屠畜場に出荷された豚枝肉から,無作為抽出によって選んだ枝肉と,枝肉格付員によって軟脂豚と判定された枝肉から,腹腔部の腎臓脂肪を採り試験に供した.軟脂豚の腎臓脂肪は,無作為抽出試料に比べてC16:0, C18:0および全飽和脂肪酸含量が少なく,C18:1とC18:2含量が多かった.また,軟脂豚の脂肪は融点が低く,屈折率が高かった.屠畜場から無作為に抽出した豚枝肉の腎臓脂肪は,性別の区分で,去勢豚は雌や雄に比べて,C18:2と全不飽和脂肪酸含量が少なく,屈折率が小さかった.枝肉重量での分類では,C16:0と全飽和脂肪酸含量は,枝肉重量の増加にともなって減少し,C18:2含量と屈折率は枝肉重量の増すにつれて増大していた.市場から得た試料では,背脂肪の厚い枝肉の脂肪は,C18:1が多くC16:0とC18:0が少なかった.背脂肪の厚さが1.5~2.4cmの範囲の枝肉の脂肪は,C18:2含量と屈折率とが最も少なく,これに対して背脂肪の厚さが1.5~1.9cmの枝肉の脂肪は,飽和脂肪酸含量が最も多く,屈折率は最も小さかった.試験した腎臓脂肪の各脂肪酸含量相互間に相関関係が認められ,C16:0とC18:0,C16:0とC18:2,C18:0とC18:2との間の相関はかなり高かった.また,脂肪の融点と屈折率との相関も高かった.さらに飽和脂肪酸の含量と融点との相関,またC18:1は除いて各脂肪酸含量と屈折率との相関はかなり高かった.これらの結果から,豚腎臓脂肪の理化学的性質相互の相関は,軟脂豚肉の判定に有効な根拠を与えるものと考えられる.なお,軟脂豚の生産に関与する大きな要因は,飼料ならびに飼養の条件にあるものと推測された.

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