抄録
本研究は,暖地型イネ科牧草のローズグラスを用い,山羊第一胃液とペプシン液(人工ルーメソ法)並びにペプシン液とセルラーゼ液(セルラーゼ法)によるin vitro消化試験を行ない,乾物消失率に対するアセチルブロマイドリグニン(ABL)の関与について追究したものである.得られた結果は次のとおりである.節間伸長期の葉部と茎部および成熟期の葉部と茎部の計4試料についてのABL含量は,従来広く用いられている酸性ディタージェントリグニン(ADL)含量と比べ高い値を示し,ABL/ADLの値は木質化が進むのに伴い低下する傾向が認められた.人工ルーメン法での乾物消失率は,それぞれ,70.2%,63.7%,55.4%および37.8%となり,その際のABL消失率は,46.5%,34.6%,31.4%および19.1%となった.また,セルラーゼ法による乾物消失率は,それぞれ,62.0%,50.6%,46.2%および27.5%となった.その際,ABLの一部もまた消失し,ABL消失率は,30.3%,16.4%,15.7%および6.1%となった.また,人工ルーメン法およびセルラーゼ法による乾物消失率とABL消失率をそれぞれ比較検討し,さらに両消失率の関係を検討した結果,木質化の進んだものほど細胞壁の消化に果たすABL消失の影響は大きいことが推察された.さらに,人工ルーメン法における乾物消失率とABL消失率との間には正の相関関係が認められた.