日本畜産学会報
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暖地型イネ科牧草の乾物消化率に対するアセチルブロマイドリグニンの関与
下條 雅敬五斗 一郎
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1984 年 55 巻 11 号 p. 838-842

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抄録
本研究は,暖地型イネ科牧草のローズグラスを用い,山羊第一胃液とペプシン液(人工ルーメソ法)並びにペプシン液とセルラーゼ液(セルラーゼ法)によるin vitro消化試験を行ない,乾物消失率に対するアセチルブロマイドリグニン(ABL)の関与について追究したものである.得られた結果は次のとおりである.節間伸長期の葉部と茎部および成熟期の葉部と茎部の計4試料についてのABL含量は,従来広く用いられている酸性ディタージェントリグニン(ADL)含量と比べ高い値を示し,ABL/ADLの値は木質化が進むのに伴い低下する傾向が認められた.人工ルーメン法での乾物消失率は,それぞれ,70.2%,63.7%,55.4%および37.8%となり,その際のABL消失率は,46.5%,34.6%,31.4%および19.1%となった.また,セルラーゼ法による乾物消失率は,それぞれ,62.0%,50.6%,46.2%および27.5%となった.その際,ABLの一部もまた消失し,ABL消失率は,30.3%,16.4%,15.7%および6.1%となった.また,人工ルーメン法およびセルラーゼ法による乾物消失率とABL消失率をそれぞれ比較検討し,さらに両消失率の関係を検討した結果,木質化の進んだものほど細胞壁の消化に果たすABL消失の影響は大きいことが推察された.さらに,人工ルーメン法における乾物消失率とABL消失率との間には正の相関関係が認められた.
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