抄録
メン羊14頭を用い濃厚飼料と粗飼料の給与割合とVFA塩の添加給与が肥育(特に飼料要求率と屠体成績)と体脂肪脂肪酸組成に与える影響を調べた.実験I; 濃厚飼料と粗飼料の比を7:3,5:5および3:7とし,体重の3.3~3.8%を1日の給与量とした.実験II; 濃厚飼料と粗飼料(5:5)にプロピオン酸または酢酸で体重の0.13%摂取するようにそれぞれのナトリウム塩を添加給与した.試験開始時,開始後3,7,13週目および屠殺時の体脂肪を採取して分析に供した.実験Iの飼料要求率は濃厚飼料多給で10.6,等量給与で11.7,粗飼料多給で16.1と濃厚飼料を多給する程優れていた.実験IIでは,VFA塩給与により枝肉と内臓脂肪重量が著しく増加した.肥育に伴う脂肪酸組成の変化では,粗飼料多給は濃厚飼料多給より大網膜脂肪のC18:0脂肪酸を高くしC18:1脂肪酸を低くした.いずれの給与割合でも7週目までC18:0脂肪酸は上昇,C18:1脂肪酸は減少する変化であった.プロピオン酸添加によりC18:1脂肪酸が高くなった.屠殺時では濃厚飼料多給によりC18:1脂肪酸とヨウ素価が高くなった.プロピオン酸塩添加給与は不飽和脂肪酸,側鎖•奇数炭素脂肪酸およびヨウ素価を著しく増加させた.濃厚飼料とVFA塩添加給与は体脂肪重量を増加させ,かつ濃厚飼料とプロピオン酸は体脂肪の不飽和化を促進させることが判明した.