日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
鼓脹症牛の第一胃液性状およびサリノマイシン投薬による治療効果
星野 貞夫脇田 正彰小林 泰男大久保 正彦中嶋 隆文清水 良彦高野 司郎工藤 英彦
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 57 巻 10 号 p. 833-841

詳細
抄録

肥育牛のルーメン液性状と鼓脹症発生の関連を知るため,135頭のホルスタイン種及び7頭のヘレホード去勢牛から6~7月齢と11~14月齢の2回ルーメン液を採取し,そのpH,粘度,揮発性脂肪酸(VFA)及びアンモニア濃度,微生物組成などを測定した.鼓脹症牛のルーメン液性状は,pHや粘度が高く,アンモニアや酢酸割合が高く,プロピオン酸割合が低く,プロトゾア数が多く,細菌組成ではグラム陰性球菌(No.1)とグラム陽性小桿菌(No.19)が多く,グラム陰性桿菌(No.13,14,15)が少ないという特徴がみられた.この特徴は鼓脹症が発生する前に採取したルーメン液の性状とはきわめて対照的であるから,罹患牛のルーメン液性状は本症の発症因ではなく,むしろ発症の結果を示しているように思われる.サリノマイシン(1日1頭当り100mg)を21頭の罹患牛に投与したところ軽度から中程度の鼓脹症の20頭が治癒した.サリノマイシン投与牛のルーメン液性状は,正常牛のそれに復帰する傾向がみられた.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top