日本畜産学会報
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精巣上体内成熟過程における豚精子蛋白質の電気泳動的性状
平尾 和義飯塚 淳市菅野 恵丹 具隆小山 久一
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1986 年 57 巻 11 号 p. 931-939

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抄録

精巣上体内初期成熟過程における精子蛋白質性状の変化を明らかにするため,ランドレース種豚36例から屠殺直後に採取した精巣上体頭,体,尾および精管精子,並びにこれらとは別のランドレース種豚から得た射出精子の蛋由質が,ゲル等電点/SDSゲル電気泳動により分析比較された.
精子蛋白質は全体を通じpI域4.0~7.9,分子量2.35~8.03×104の範囲に34分画確認された.これらのうち濃染蛋白質の分画数は精巣上体下降に伴い減少し(頭,28分画:体,17分画:尾,5分画),精管(12分画)で増加,射出精子(6分画)で,再び減少した.精子蛋白質分画のpI近似値は精巣上体頭精子6.0~6.9,体および尾精子5.0~5.9の範囲に多く,酸性または弱酸性域に分布した.pI域5.0~5.9,分子量5.68~5.78×104の範囲に検出された3分画は精巣上体,精管および射出精子に共通し,精巣もしくは精巣上体頭由来の被覆蛋白質とみなされた.精巣上体頭精子において検出されたpI域5.0~6.9,分子量2.35~7.92×104の範囲の15分画は,精巣上体体およびそれ以降の部位における精子においては消失した.また精巣上体体精子でpI域5.0~5.9,分子量6.50~7.13×104の範囲に4分画,精管精子でPI域7.0~7.9,分子量3.84×104の分画がそれぞれ新たに出現した.さらに精巣上体頭精子でpI域3.5~4.0,精巣上体体および尾並びに射出精子ではpI域7.5~7.9の範囲内に1.5~2.0×104の低分子蛋白質の存在が推定され,これら精子蛋白質の変化が,精巣上体体以降の豚精子の機能的成熟に関与すると考察された.

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