日本畜産学会報
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酵素添加によるチーズの熟成促進, 特にその成分的性状について
片岡 啓中江 利孝植野 光雄額田 和敬大谷 啓介
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1987 年 58 巻 2 号 p. 107-115

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抄録

チーズの熟成促進を目的とし, 4種類の食品用微生物プロテアーゼをカード1kg当り5×10-3, 5×10-2および5×10-1Anson unit添加した硬質チーズを試作し, それらの熟成中における形態別窒素の含量変化, それに及ぼす乳酸菌菌体の添加, 熟成温度の影響, およびリパーゼ添加による遊離脂肪酸の生成について検討した.結果は次のとおりである. 1) プロテアーゼの添加量を増すと熟成中に浸出液を生じチーズの組織は砕けやすくなる. 2) プロテアーゼの種類により差があるが, 5×10-2unit添加チーズの熟成期間は約1/2-1/4に短縮された. 3) プロテアーゼ添加チーズは, 全般に水溶性窒素に対してTCA可溶性窒素が多く, この傾向はプロテアーゼ添加量が多いほど強い. さらにTCA可溶性窒素に対するアミノ態窒素の比率が低いが, 酵素の種類により多少の差がみられた. 4) プロテアーゼ添加チーズにLactobacillus helveticusアセトン乾燥菌体を20-200mg/kg加えると, 水溶性窒素に対するTCA可溶性窒素, アミノ態窒素およびアンモニア態窒素の比率を高めた. 5) 熟成温度を12℃ から16℃ に上げると, プロテアーゼ添加チーズは水溶性窒素が低下し, アミノ態窒素と特にアンモニア態窒素の含量が高まる. プロテアーゼ無添加チーズにも同様の傾向がみられた. 温度上昇による水溶性窒素の減少は浸出液の増加によるとみられる. 6) リパーゼを0.5mg/kg添加したチーズは遊離脂肪酸含量を約30%増加したが, ランシッド臭を高めるほどではなかった. 7) プロテアーゼ添加チーズは全般に甘味のあるオフフレーバーと苦味を伴うが, 5×10-3unit添加の場合は弱く, 特に苦味は添加量の多いものほど高まった.しかし乳酸菌菌体の添加は苦味を弱めた.

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