日本畜産学会報
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酵母摂取にともなう哺乳子ヤギの尿中へのアラントイン排泄の増加
松本 光人板橋 久雄
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1988 年 59 巻 5 号 p. 395-401

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抄録

下部消化管に移行する核酸量(プリン塩基量)と尿中へのアラントイン排泄量との関係を,哺乳子ヤギを用い,トルラ酵母(核酸含量11.0%,プリン塩基含量2.5%: 17.6mmole/100g)をルーメンバイパスさせることにより検討した.実験1では,3週齢の哺乳子ヤギに牛乳-トルラ酵母を蛋白質源とする代用乳(酵母代用乳)-分離精製大豆蛋白質を蛋白質源とする代用乳(ISP代用乳)をそれぞれ1週間ずつ連続して与え,毎日全尿を採取し,分析に供した.実験2では,牛乳にトルラ酵母を1日あたり15g, 30g, 45g,あるいは60g添加してそれぞれ1週間与え,後半3日間の1日尿を全量採取し分析した.その結果,実験1では, N摂取量は牛乳<酵母代用乳<ISP代用乳の順に増加し,それにともない,尿中総N,尿素態Nの排泄量が増加した.一方,アラントインは,牛乳あるいはISP代用乳給与時には100mg (0.63mmole)/日前後であったのに対し,酵母代用乳給与により600-700mg(3.8-9.4mmole)/日に増加した.実験2では,尿中アラントイン排泄量と酵母中のプリン塩基摂取量との間に正の相関(r=0.973,尿中アラントイン量(mmole/日)=0.506×プリン塩基摂取量(mmole/日)-0.065)が認められた.以上から,哺乳子ヤギでも摂取されたプリン塩基の50%以上が速やかにアラントインとして尿中に排泄され,下部消化管に移行してくる核酸を速やかに消化,吸収,代謝する能力をもつことが明らかになった.さらに,大量の核酸摂取が内因性の核酸代謝に影響することが示唆された.

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