日本畜産学会報
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イタリアンライグラスブラウンジュースで培養した酵母のRNA除去がラットにおける栄養価に及ぼす影響
Gudipati Upender REDDY大島 光昭西村 隆雄
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1990 年 61 巻 10 号 p. 945-951

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抄録

イタリアンライグラスの搾汁液から緑葉蛋白質濃縮物(LPC)を分離したあとに残る褐色汁液(ブラウンジュース)によるカンヂダ酵母(SCP)の培養,SCPからのRNAの除去およびそれらのSCPの栄養価について検討した.SCP収量は同じ処理工程で得られたLPCの約半分であり,非常に高かった.SCPを過塩素酸ナトリウムで処理することにより,それに含まれるRNAの約20%が除去された.これらのLPC,RNA除去および無除去SCPおよび対照として用いたカゼインの何れかを単一蛋白質源とし,さらにアミノ酸を添加した粗蛋白質含量10%の飼料を調製し,成長中のラットによる出納試験を実施した.その結果,RNA除去操作はSCPの蛋白質の栄養価にまったく影響を及ぼさず,いずれのSCPもアミノ酸無添加の場合の栄養価は非常に低かった.しかしメチオニン添加により著しく改善され,アミノ酸を補足したカゼインおよびLPCとほぼ等しいラットの成長を示した.これらのSCPの蛋白質消化率はカゼインおよびLPCのそれよりも劣ったが,LPCとの差は有意なものではなかった.飼料蛋白質のアミノ酸バランスの指標ともいえるラットの吸収窒素当たりの尿中窒素排泄量は両SCP給与の場合が他よりも有意に高く,これらにメチオニンを添加しても,アミノ酸を添加したカゼインおよびLPCよりも高い傾向を示した.しかしSCPにさらに他のアミノ酸を添加しても効果が得られず,かっメチオニンを添加した際の,これも飼料蛋白質のアミノ酸バランスの指標とされる血中尿素が他よりも低い傾向にあったところから,尿中窒素の一部は核酸代謝産物に由来することが考えられた.血中尿酸含量には飼料間に有意な差はみられなかった.以上のごとく,短期の試験結果ではあるが,このSCPはRNAを除去することなくラットに給与しても血中尿酸含量を高めず,かっメチオニンのみの添加でアミノ酸を添加したカゼインおよびLPCとほぼ等しい栄養価値を示すことが明らかとなった.
すなわち,牧草搾汁液からLPCを分離したあとに残るブラウンジュースで培養した酵母はLPCと同程度の栄養価を有し,かっ収量も比較的高いところから,その生産は成分分画によって牧草の利用性を高めるための有効な手段の一つといえよう.

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