日本畜産学会報
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日本短角種の放牧を取り入れた育成•肥育にともなう血液成分の変化
常石 英作西村 宏一滝本 勇治武田 尚人
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1990 年 61 巻 2 号 p. 131-138

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抄録

日本短角種去勢牛を用い,A区(6頭)は全期間人工草地で,B区(8頭)は夏季に野草地放牧を組み入れ,C区(2頭)は馴致のための放牧以外はすべて野草地で,それぞれ濃厚飼料無給与の放牧を行なった.仕上げ肥育期は,いずれの区も濃厚飼料と牧乾草を飽食させ,放牧を取り入れた育成•肥育の全期間にわたっての血液成分の変化を検討した.
血漿の尿素態窒素(UN)は人工草地への放牧によって明らかに上昇したが,野草地放牧では低い値であった.グルコース(GLU)は,野草地放牧において,人工草地における放牧と比べて低い値となった.また遊離脂肪酸(NEFA)は,放牧時にやや高い値を示した.とくにB区のNEFAは,人工草地から野草地放牧になると高い値となり,GLUの変化と対照的であった.カルシウム(Ca)は,A区のように長期間人工草地に放牧した場合,夏季に低下する傾向がみられた.無機リン(IP)は,B区とC区の野草地放牧において,また放牧末期においてそれぞれ低下する傾向がみられた.マグネシウム(Mg)は,B区とC区の野草地放牧において上昇がみられ,一方,A区のように人工草地のみで放牧した場合には終牧時に,顕著な低下が認められた.
以上のことから多量の養分摂取を必要とする肥育牛にとって,野草地のみでの放牧では十分な発育が望めないと思われる.しかし人工草地での放牧では,蛋白の過剰およびミネラル特にMgの不足などが危惧されることから,野草地放牧を組み入れることは有意義であると考えられる.

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