日本畜産学会報
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豚皮ウェットホワイトからの甲革の製造
宝山 大喜砂原 正明岡村 浩
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1990 年 61 巻 3 号 p. 241-248

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抄録

豚皮の蛋白質資源としての有効利用とクロム塩による環境汚染の防止の観点から,アルミニウムを前鞣しに使用する新しい皮革用原材料(ウェットホワイト)の製造と利用を検討している.ウェットホワイトの調製は,従来のクロムを使用するウェットブルーの場合とは異なり,製造工程で硫酸アルミニウムを使用するために,鞣し廃液はもとより,熟成廃液や水絞り廃液中にもクロム塩は含まれない.また,シェービング屑等の廃棄物中にもクロム塩が含有されないために,これらの副廃物の有効利用も可能である.
現在,クロム鞣し革が主流を占めているが,クロム鞣し革の性状を望む場合には,ウェットホワイトをシェービングし,その後にクロム再鞣を行う方法が有効である.この場合,鞍し廃液は循環利用することにより,クロム塩の排出を最小限に抑えることが可能である.
本試験では,豚ウェットホワイトを製造し,厚さ調整後,鞣し廃液を循環利用するクロム鞍製方法に基づいて甲革の製造試験を実施した.
製品革の性状は,官能検査,一般化学分析および機械的性質より評価し,次の結果を得た.
1) クロム排出量は,中和前の水洗からの流出だけに抑えることが可能となり,原皮1枚当り(約5kg),約2.1g(Cr2O3として)となった.
2) ウェットホワイトの水絞り,分割,シェービング作業は,通常のウェットブルーと大差がなかった.
3) 製造革の靴用甲革としての適性は,化学分析値や機械的性質の測定結果からは,何ら問題となる点は認められなかった.しかし,官能検査結果では,しぼの状態が劣るとの結果が得られた.
以上の結果から,しぼ状態の良い高品質な甲革を製造するためには,アルミニウムの溶脱が容易なウェットホワイトを調製することと製品革に充実感を持たせるような再鞣方法の検討が必要と思われる.

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