1990 年 61 巻 3 号 p. 264-270
高温ストレスはブロイラーの生産性を著しく低下させる.高温ストレスは成長を停滞させるだけでなく,へい死率を増加させる.一方,ストレス経験によりブロイラーは,ストレスに対する抵抗性を獲得することも知られている.そこで,本研究では,ストレッサーとしての絶食をブロイラー管理に応用すべく,4回の実験を行なった.実験1は1987年の7~9月に鹿児島県東市来町の鹿児島県経済連実験牧場において行なった実用規模の実験であり,10日齢および20日齢にいずれも24時間絶食した後,59日齢まで飼育し,へい死率,飼料効率,体重•筋肉生産量を調べ,絶食を施さなかった対照区と比較した.実験2および3は,1988,89年の同時期に,同牧場において,実験1に準じて行なったが,へい死率のみ調査した.実験4は,終日30°Cに調節した飼育室において15日齢時の雄ブロイラーを24時間絶食して,その後27日齢までの成長ならびに筋肉蛋白質の合成•分解速度の変化を調べた.実験1では,絶食により平均体重はわずかに減少したが,飼料効率は変わらず,筋肉生産量はむしろ増加した.へい死率は実験1,2および3の結果を分散分析により解析したところ絶食により明らかに低下した(対照区5.1%,絶食区4.0%,P<0.01).実験4では,体重は再給餌により急速に回復することおよびこの体重の回復は,筋肉蛋白質の合成速度が著しく上昇することに基づくものであることがわかった.