日本畜産学会報
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着床前のマウス胚盤胞表面におけるレクチン結合の組織化学的観察
新井 吉典四谷 伊公子新村 末雄石田 一夫
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1992 年 63 巻 3 号 p. 318-324

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抄録

hCG注射後96から126時間までのマウスの無処置胚盤胞,Day 10とDay 24の着床遅延胚盤胞および着床を開始させたDay 10の胚盤胞の細胞表面について,レクチン結合を組織化学的に観察した.PNA, GS-I, SBA, WGAおよびDBAは,どの胚盤胞においても栄養膜と内細胞塊の細胞に弱度または強度に結合していたが,GS-IIとLPAは全く結合しなかった.UEA-Iは108時間までの無処置胚盤胞では栄養膜細胞にのみ結合したが,114時間以降のものでは内細胞塊細胞に結合が出現し,栄養膜細胞では強くなった.この結合は着床遅延胚盤胞にはみられなかったが,着床を開始させた胚盤胞では栄養膜と内細胞塊の細胞に認められた.BPAは102時間までの無処置胚盤胞では栄養膜細胞にのみ結合したが,それ以降の胚盤胞と着床遅延胚盤胞では栄養膜と内細胞塊の細胞に結合した.MPAとCon Aは108時間までの無処置胚盤胞と着床遅延胚盤胞では栄養膜細胞にのみ結合したが,114ないし126時間の無処置胚盤胞および着床を開始させた胚盤胞では内細胞塊と栄養膜の細胞に結合した.これらのことから,マウス胚盤胞は着床へ向けて,栄養膜細胞表面ではN-アセチルガラクトサミンを含む複合糖質の減少とフコースを含むものの増加,また内細胞塊細胞表面ではBPAとMPAに親和性のあるN-アセチルガラクトサミン,UEA-Iに親和性のあるフコースまたはCon Aに親和性のあるマンノースを含む複合糖質の出現が考えられた.

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