日本畜産学会報
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乳酸脱水素酵素の電気泳動によるLactobacillus acidophilus グループ乳酸菌の同定
植村 順子戸羽 隆宏藤沢 倫彦伊藤 敞敏
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1994 年 65 巻 2 号 p. 112-119

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抄録

Lactobacillus acidophilusグループの乳酸菌はヒトおよび動物の腸管内に生息し生理的に重要な役割を果している.近年になってDNA-DNAホモロジーの研究が盛んになり,Lactobacillus acidophilusグループの乳酸菌が6つに分れることが提唱されるようになったが,今まで用いられてきた生化学特性の比較では6つの菌種は分別できなかった.そこで本研究では,DNA-DNAホモロジーを行なわずに,D-およびL-乳酸脱水素酵素(LDH)のポリアクリルアミゲル電気泳動でこの6菌種を迅速かっ簡便に分別できるかどうかを検討した.その結果,泳動BufferがpH8.3のときD-およびL-LDHの電気泳動移動度の割合がそれぞれL. acidophilusではN. D./1.29,L. crispatusは1.05/1.28,L. amylovorusは0.97/0.44,L. gallinarumは0.92/0.43,L. gasseriは1.01/1.00,L. johnsoniiは1.11/1.00となり,L. acidophitus,L. crispatus, L. amylovorusとL. gallinarum, L. gasseri, L. johnsoiiの5つに分けることができた.またpH8.3でLDHが検出されなかった菌株においては泳動BufferのpHを7.5に下げることによってLDHが検出された,L. acidophilusのD-LDHに関しては,染色反応液にFDP(Fructose-1,6-diphosphate)を添加して染色することによって検出された.さらに電気泳動の移動度の差異では区別できなかったL. amylovolusとL. gallinarumは,BLB (BRIGGS Liver Broth)培地で1夜培養した後,BL寒天平板培地に食塩を4%添加してその生育の有無を調べることによって容易に区別できた.このような組合せによって,L. acidophilusグループの6菌種を簡便に同定できることが判明した.

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