日本畜産学会報
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ヒツジの反芻胃内におけるin saccoおよびin vivo法による非分解性乾草RNA量の測定とその微生物合成量の推定値に及ぼす影響
趙 国〓佐々木 啓黒澤 正吉酒井 雅人中嶋 芳也
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1998 年 69 巻 2 号 p. 146-153

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抄録

オーチャードグラス乾草を単体給与したヒツジを用いて,乾草RNAの第一胃内分解率をin Saccoおよびin vivoで調べ,十二指腸に流入する乾草由来RNA(第一胃内非分解性乾草RNA)量を測定した.さらに,このRNA量が,RNAを微生物体マーカーに用いて求められる第一胃内微生物合成量にどの程度の影響を及ぼすかについて検討した.乾草RNAのin sacco分解率,いわゆる第一胃内有効分解率(ED)は,第一胃内分解性(分解率,分解速度)および通過速度から,in vivo分解率は十二指腸に流入する総RNA量と微生物由来RNA量の差から求めた.また,その微生物(細菌+原虫)由来RNA量は,細菌および原虫のマーカーにそれぞれジアミノピメリン酸(2,6-diaminopimeric acid)およびホスファチジルコリン(Phosphatidylcoline)を用い,細菌量および原虫量を求め,それぞれのRNA濃度を乗じて求めた.乾草RNAのEDは平均で79.4%を示し,乾物(49.3%)および粗タンパク質(60.4%)のそれらに比して高かった(P<0.01).一方,乾草RNAのin vivo分解率は平均で95.7%となり,in saccoの値(ED)よりも高かった.これらの分解率を用いて求められる十二指腸流入乾草由来RNAは,in saccoおよびin vivoでそれぞれ21および4mg/kgBW/dとなり,細菌量(見かけ)に換算するとそれぞれ170および32mg/kgBW/dであった.これら見かけの細菌量の総細菌量(2,513mg/kgBW/d)に占める割合は,in saccoで6.8%,in vivoで1.3%であった.これらの結果から,十二指腸に流入するオーチャードグラス乾草由来RNA量の微生物合成量の算出値に与える影響は比較的小さいものと考えられた.

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