日本畜産学会報
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分散成分のAIアルゴリズムによる制限最尤推定のための一演算手法ならびにその特性
蘆田 一郎祝前 博明
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1998 年 69 巻 7 号 p. 631-636

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抄録

家畜育種の分野では,分散成分および遺伝的パラメータの制限最尤(REML)推定がしばしば実施される.REML推定のための代表的なアルゴリズムとして,expectation-maximizationやderivativefreeなどが知られているが,近年,average information (AI)と呼ばれるアルゴリズムの好ましい演算特性が注目されつつある.本研究では,個体効果(育種価)と残差を含む個体モデルを仮定し,予測残差ベクトルを含む通常のAI行列表現に基づくアルゴリズム(ここでは, AIREML (O)と呼ぶ)に対して,当該ベクトルを消去したAI行列表現について検討を加え,得られた行列要素を用いた一演算手法(AIREML (M))の計算特性を調べた.数値的な検討は,両AI手法およびEM手法(EMREML)のFSPAKサブルーティンを利用したFORTRANプログラムを作成し,黒毛和種の枝肉重量に関するデータセットを分析して行った.AI行列から予測残差のベクトルを消去した場合,同行列の要素は,観測値ベクトルおよび個体効果の解ベクトルの2次形式の関数として,混合モデル方程式の係数行列の一般化逆行列の一部分行列および相加的血縁行列の逆行列などの項を含む形で表された.AIREML (M)での反復計算過程における演算時間は,AIREML (O)のそれと大差なく,EMREMLの場合に比べてはるかに短縮された.AIREML (M)の実行に際し必要とされたメモリ量は,EMREMLによる場合と同程度であり,予測残差の計算を回避する本AIREML (M)の手法は,ここで取り上げたモデルに関するREML推定のための実用的な一演算手法であると考えられる.

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