日本畜産学会報
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食肉の比熱に及ぼす脂肪含量の影響
宮原 晃義谷口 慎森地 敏樹
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1999 年 70 巻 9 号 p. 184-188

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抄録

食肉の比熱は,水分,脂肪およびそれ以外の成分に影響される.示差走査熱量計を用いて,ゼラチン,寒天,脂肪酸および食肉(牛肉,豚肉,鶏肉)の比熱を0~100°Cの温度範囲で測定した.
水分の影響をみると,酸化アルミナでCP=0.04x+0.50(Cp:30°Cでの比熱,X:水分%)の関係があった.ゼラチンと寒天を用いて比較すると,乾燥品の比熱(10~100°Cの範囲の平均値)はそれぞれ1.49,1.37kJ/kg•Kであり,水分92%を加えるとそれぞれ3.53,3.46 kJ/kg•Kとなり,ほぼ同程度の影響が確認された.
ウシ,ブタ,ニワトリの脂肪の主成分であるC16:0, C18:0, C18:1, C18:2脂肪酸の比熱は融解潜熱により,融点付近で高くなった.また4者の等量混合物では5°Cと60°C付近の比熱がやや高い値を示した.
牛肉,豚肉,鶏肉の10~100°Cの範囲の比熱を比較すると,赤肉では畜種による差はほとんど認められず,温度上昇に伴って,約0.5kJ/kg•Kの直線的な温度依存性が見いだされた.ウシ,ブタ,ニワトリの脂肪の比熱は,いずれも融点付近で高い値を示した.そのため,脂肪含量の高い試料ほど畜種による比熱の差が明瞭になり,牛肉と豚肉では35°C付近で比熱の上昇が認められた.

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