2000 年 71 巻 9 号 p. 318-322
アンモニア(NH3)処理によるめん羊における乾物消化率(DMD)の向上量と全窒素の増加量,ヘミセルロースの減少量および原料草の各種リグニン含量との関連をイネ科草6点,マメ科草4点について検討した.イネ科,マメ科ともNH3処理で全窒素は増し,ヘミセルロースは減少したが,DMDはイネ科ではいずれも有意に向上したのに反し,マメ科ではいずれも向上しなかった.イネ科ではマメ科と比べて,酸性デタージェントリグニン含量は低かったが,酸性デタージェント可溶リグニン(ADSL)含量は顕著に高かった.マメ科ではADSLは少なかった.イネ科でのDMDの向上量と全窒素の増加量,ヘミセルロースの減少量との間には正の相関がみられなかったが,原料草のADSL含量との間に有意な正の相関がみられ,マメ科を加えるとその相関はより高まった.稲わらおよびそれをNH3処理したものから単離した酸性デタージェント繊維のインビトロ乾物消化率(IVDMD)は前者よりも後者が有意に高かった.これに反し,無処理稲わらから単離し,ADSLが除去されている酸性デタージェント繊維をNH3処理してもIVDMDは高まらなかった.さらに,稲わらのADSL消化率はNH3処理により有意に高まった.以上より,NH3処理による効果発現にはADSLの存在が関与しており,ADSL含量が高いと,NH3処理によるDMDの向上も大きいものと考えらた.