地球環境
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空間情報を用いた高山帯の植生変化と環境変動のセンサス
金子 正美星野 仏方雨谷 教弘
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2014 年 19 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

北海道大雪山系では融雪時期の早期化や土壌乾燥化などの影響で、乾燥化の指標種とされているチシマザサ(Sasa kurilensis、以下、ササ)やハイマツ(Pinus pumila)などの低木が分布域を拡大している。それと対応して、高山湿生植物群落の分布域が縮小し、高山植物の局所的な絶滅が危惧されている。本研究では北海道大雪山国立公園の五色ヶ原を解析モデル区とし、植生変動の定量化と変動のメカニズムを明らかにするために、現地調査、現地計測、航空機、及びマイクロ波衛星観測の手法を用いて、植生判別と植生変動地域の抽出、植生変動地域における地表面特性の抽出、植生変動地域における土壌水分の分布と季節変動の抽出、及びササ侵入危険地域の予測などを行った。特に土壌水分の季節変動の推定の研究では、植生密生地域において植物の下層にある土壌水分の季節変動の推定に初めて成功した。研究対象地では、ササの拡大が最も顕著な木道周辺で、1977年から2009年までの31年間で30%拡大していた。またハイマツも14%増加し、樹高生長も見られた。ササの増加地域は、斜面方位が主として東斜面であり、傾斜度が0-20度以下、日射量が高い(80-90KWh/m2)場所で選好性を示した。マイクロ波を用いた植生変動地域における土壌水分の季節変化は、ササ分布域では土壌水分の減少(乾燥化)が顕著に現れた。GISの解析により、アナログ空中写真とマイクロ波データを重ねあわせて解析することにより、植生変化と環境変動を詳細に把握することが可能となった。

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© 2014 一般社団法人国際環境研究協会
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