2017 年 22 巻 2 号 p. 153-166
土地利用が混在し権利関係が複雑な日本の既成市街地を低炭素型へ転換するためには、再開発など大規模な開発による都市更新は現実的ではなく、地区内の土地・建物所有者が所有する建物の更新時期を活用して段階的に空間の再構築を誘導していくことが重要となる。本稿では、建築・エネルギー・設備・交通を統合的に扱え、かつ空間デザインを論じるにあたって大きすぎない「街区群」を空間計画の単位として、望ましい将来デザインに向かって漸次的に地区を低炭素化する手法を論じる。研究の手法として、まず計画プロセス全体を通して定量的にモニタリング、進捗評価できるシステムを開発し、それを名古屋都市圏において異なる特性を持つ三つの地区に適用し、その適用可能性と効果を論じた。その結果、空間デザインと環境技術を統合的に進めることが、地域の自立的な低炭素化に必要不可欠であること、人口減少地区では地区レベルでの土地利用方針の検討も街区群の低炭素化に重要な取組となることが明らかとなった。