2017 年 22 巻 2 号 p. 175-184
気候変動に責任を持つ都市に求められるCO2削減にあたっては、低炭素型のエネルギー機器への置き換えを見込む場合でも、高齢化や人口減少を踏まえ、長寿世代が集まってケア・サービスを享受する未来の暮らし方の変化を読み込んで効果を把握するアプローチを必要とする。給湯、映像(AV機器)、生活支援等で需要が高まる超高齢社会に賢く適応するようなスマートなエネルギーマネジメントが求められている。都市成長の後に、震災被害を受けて顕著な復興を果たし、今後の20年間で急速な高齢化を迎える地区を対象に、高齢者向け集合住宅や介護老人福祉施設等の置き換えで増大するエネルギー需要を伴う施設を対象とするスマートなエネルギーマネジメントの効果を定量的に考察する。
著者らが開発した非集計の経時プロファイル型エネルギー需給モデルを用いて、神戸市東灘区を対象に分析を行った。集合住宅と福祉施設を隣接立地させ、電力を一括して受電するとともに、福祉施設にコージェネレーションを導入し、自家消費及び集合住宅への電力融通によってエネルギー消費に伴うCO2排出量を15~25%程度削減できることを示した。また、高齢化、世帯分離に伴い、2030年に向けてエネルギー需要が増大すると見込まれるが、集住促進によって都市居住によるCO2排出量を2010年を上回らない水準にできることを示した。